2013年4月2日火曜日

輸出立国の嘘(貿易赤字も健全)



多くの人は、日本のことを、貿易黒字によって経済が成り立つ、「輸出立国」と考えています。つまり、輸出総額が輸入総額を大幅に上回れば、お金がじゃぶじゃぶ国内に流入すると考えています。そのため、貿易黒字を善、貿易赤字を悪と受け止めています。多くの著名な評論家や経済学者も同様です。
しかし、そう考える方は、為替取引と国内通貨量の簡単な関係を理解していません。実際は、輸出がいくら伸びても、日本国民はお金持ちになれません。

そもそも、輸出立国の信者は、「輸出で得た外貨が国内にそのまま流入する」ことを前提に考えています。しかし、海外旅行経験者であれば、誰しもこの前提に「はて?」と思うはずです。

具体的に自動車を輸出する事例を考えてみます。自動車メーカは、アメリカで自動車を売ることにより、対価として当然アメリカの通貨「ドル」を受け取ります。しかし、彼らはその「ドル」を、日本国内で利用できないため、為替取引により「円」に両替する必要があります。この為替取引により、自動車を売ったことの「対価」を初めて日本国内で利用できます。輸出で得た外貨は国内で流通しません。

重要なことは、為替取引により、自動車メーカが円を取得し円の保有を増やす過程で、金融機関など為替取引相手が円を手放し円の保有を減らすことです。つまり両者の円保有の総和は変化しない点です。ここで簡単な法則の存在に気がつきます。それは、「輸出で外貨を得ても、日本で流通する円の量は変化しない」ことです。


輸出によって得られるものは、外貨であり、外国の物や外国債を購入するための権利です。つまり、輸入を差し引いて余るほどの外貨を稼いでも、円建ての経済には寄与しません。単に輸出を拡大しても景気は良くなりません。

これからの日本は、輸出で外貨(外国債)を貯めることばかりせず、これまでの外債を活用して外国からの輸入を拡大し収支不均衡を是正するべきです。昨今の貿易赤字は健全と言えます。
(おしまい)

            ※図は時事ドットコムより

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